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「そこいらにある可愛い別荘にはなぜ不必要な大きな屋根があるのか。なぜ窓が少なく、小さく桟が入っているのか。なぜあの大邸宅には鍵のかかった多くの部屋があるのか。あるいは何のためのこの鏡つきの洋服箪笥が、この洗面器が、この洋箪笥か。またこちらには、何のためのアカンサスの飾りつきの書棚が、渦巻つきの肘木が、ガラス戸棚が、皿類が、銀器類が、食器戸棚が。なぜ、この巨大なシャンデリアが。何のための暖炉か。何のための天蓋つきのこのカーテンか。なぜ壁に紙が貼ってあり、色がいっぱいで、綾になったり、色とりどりの縁飾りがあったりするのか。
お宅はうす暗いですね。窓の開けたてが不便ですね。列車食堂ならどれでもついている換気用の小窓がありませんね。お宅の飾り電燈は目に痛いですね。お宅の壁の偽石や色紙は下僕のように横柄だ。お宅の室内の万艦飾の中ではよく見えないだろうから、お宅に差し上げようと思って持参したピカソの絵は持ち帰ります。」(ル・コルビュジエ「建築をめざして」)